Mr,エンペラのライヴレポート


「カラダデカンジテ ライブ」
H・I・K Live at MANDARA
南青山 曼荼羅 /2002年 7月11日(木)
Gt:萩谷 清 Bass:加瀬 達 Drs:市原 康


「今度の曼荼羅では新曲を中心にやるよ。ジミヘンがジャズをやるみたいな感じのやつ・・・」
管理人さんが掲示板にそう書き込んだのは、ひと月以上も前になるでしょうか?
ちょうど、新しいタンジェリンバーストのギブソンL5を入手された直後のことでした。
新曲!? ジミヘン(Jimi Hendrix)!? それをフルアコのニュー・ギターで!? いったいどんな感じになるんだ?
しかもメンバーは、2月の横浜ファーストでオーソドックスな4ビートジャズを堪能させてくれた
あの最強トリオ編成です。
(しかし、あのライブはよかったな!思えば私の萩谷ワールドとの文字通りファーストコンタクトだった・・)

スペシャルな期待が高まるなか、いよいよ当日がやって来ました。
7時半開始の第一ステージの15分前、まんだらに着くと早くも満席状態。
でも、先に到着して席取りしてくれていたRYOさんのおかげで、
ステージ最前列のテーブルが確保されていました。
しかも管理人さんの立ち位置のど真ん前! これは嬉しいような申し訳ないような。
だってそうでしょう、師匠が精魂込めての演奏中に真ん前でタバコは吸うわ、酒は飲むわ、
ポテチはかじるわ・・・せいぜいタバコの煙がかからないように気をつけて聴きましょう。


演奏前のステージを見ると、ギターアンプが2台(StandelとEVANSでしょうか)、
そしてその手前にはペダルエフェクター(ワウ?それともボリュームペダルか?)、
さらにその前にUni Chorus(*1)とネームの入ったコンパクトエフェクターが置いてあります。これって、
ジミヘン御用達のUni Vibeのコーラス版かな?とすると、ペダルはやはりワウ? 
え〜っ、管理人さんがワウ(*2)を使うの!?

*注1 コーラス(Chorus)=ギターの音を揺らして空間的な広がりを与えるエフェクター
*注2 ワウ(Wah Padal)=シーソー状のペダルを踏み込むことでギターのトーンが大きく変化し、
    その音色がワウワウと聴こえるエフェクター。主に70年代に大流行。代表例としては
    クリームの「ホワイト・ルーム」、ジミヘンの「ブードゥー・チャイルド」等が有名。
    R&B等ではコードカッティングの際、規則的に踏み込むことで『チャカポコ、チャカポコ』と
    聴こえる特徴的なサウンドで使われ、一時期は歌謡曲のバック演奏でも大いに流行った。

第1部
1)Feel it
2)M4
3)M3
4)たまゆら
5)Tangerine Burst

実は不注意でこの第1部のMD録音が消失してしまいました!
いつもレポートを書くときはMDをプレイバックしながら、ライブでどんなドラマが起こったのか
反芻しながら書いているんですが、それができない。
なので、今回はかなり漠然とした感想めいたものになることをお許しください。

そして、今回のレポートを書くことで、自分の音楽の感受性に対する疑問まで湧き起こったことを
白状しておきます。長くなるかもしれませんが、ここしばらく漠然と考え続けてきたことと関係していて、
皆さんにも聞いてもらいたいんです。
その前にライブの曲の感想を、順を追って書かせてもらいますね。
(1)の Feel it は管理人さんのファンキーな単音リフから始まる、ちょっとソウルっぽい曲。
テーマに入ると、これまたR&Bでよく使われる複音(3度のハーモナイズされたメロディを1本のギターで弾く)
フレーズがコーラスエフェクト付きで展開されます。そしてアドリブソロで例のワウペダルが登場し、
さらにギターフレーズにワイルドさが加わります。
本来だったら、ここまでお膳立てが揃ったのですから、「イエイ、のりのり!」となるところですが、
どうもそうはならない。トリオのリズムが一体感をもって迫ってこない。何故だろう?
これは、もともとそういう狙いなのか? 多分そうだろう。管やキーボード、エレキベースを入れての
編成ならば、ストレートなグルーブで一気に聴かせる曲調なのだが、ウッドベース、フルアコのギターと
いうところに一筋縄ではないひねりがあるのかもしれない。
「そんなお子様向きのことはやらないよ」そんなメッセージが聞こえてくる気もする。
しかし、私にはそのへんがうまく理解できないのです。
ドラムの市原さんはしきりにリズムに寄っていこうとしている。だが、加瀬さんのベースはあえてそれに
絡んでいかない路を選んでいるようだ。そこに小編成でのコンビネーションのミソがあるのか?
(つまり、3人がひと色に染まるのではなく、3色としてコラボレーションするという方向性)
そして管理人さんはそのスキ間を活かすというより、複雑な音で埋めていっているような気がしました。
そのことが曲の輪郭を不明瞭なものに感じさせ、逆にいえば多重構造の奥行きを作っていくのかもしれない。
しかし、これが大スタンダード曲であればその複雑さを心地よいテンションとして文句無しに楽しめたのかも
しれないのですが、新曲ということで即座に掴みきれない、難解さとして感じてしまいました。

(2)M4、(3)M3は無題、まだタイトルがついていないホヤホヤの新曲です。
私は、はじめ無題と聞く前は、(2)はてっきり噂の Tangerine Burst だろうと思っていました。
演奏を聴いていて、オレンジ色の夕焼けの情景が目に浮かんだためです。
(3)はTechno Grooveって感じでしたっけ? そんなメタリックなイメージというより、もう少し
クリスタルな印象を覚えたんですが。いずれにせよ、コーラスを使ったギターの音色は、アーシーさを
離れ、空間に浮遊するような広がりのイメージを感じさせます。
この辺の感覚をを突き進めたギタリストの代表格にはパット・メセニーがいますが、私はどうも彼が苦手なんです。

どうも私は音楽にはアフリカや中南米音楽をルーツにした、コク、アク、エグ味がないとダメみたいなんですね。
西洋音楽でいうならばブルーノートのスパイスが利いている曲が大好き。
勿論、爽やかな曲、心洗われる曲、お洒落な曲調も大好きなんだけど、あくまでもコクとのバランスの妙味が
いいようなのです。
例のパット・メセニーや、一部のフュージョン、ECMレーベルのジャズなど、あの空間系の漂白したような
清らかさが苦手なんです。
しかし、反面コクばかりを追求していくと、ファンキージャズだったり、コテコテのブルースだったり、
カントリーだったり、演歌だったり、はては民謡だったりということになって、魂の叫びなどということには
しっくりきますが、音楽の愉しみの大きな要素である、気分転換、リラックス、精神の解放、未知次元へのトリップ
(おっ、大変なことになってきているぞ!)などとはだんだん無縁のものにもなってくることは確かです。
まあ、そんな大げさなことじゃなくても、ひとつの方向性だけでえり好みをしていると、どうもマズイのでは
ないだろうかという思いが、漠然とだけどしています。

(4)の たまゆら には前2曲とくらべると、少しアメリカっぽい香りの親しみを感じたんですが、タイトルを聞いて
びっくりしてしまいました。 ところで、たまゆらってどういう意味なんでしょう? サイトで検索したら
「魂響」という字を当てているものがあり、ちょっと納得させられました。
(5)の Tangerine Burst は意外にもギターを弾きまくる展開の曲で、萩谷清版「ドライビング・ギター」といった
ところ。しかしフレットの上から下まで、あますことなく駆使した超テクニカルな曲です。やはり「オレンジ色の
炸裂」ですね!
しかし、第1部を聴き終えての私の感想は、「難しい・・」というものでした。
トリオという小編成のため、管理人さんのギターはメロディをシンプルに奏でるだけではなく、リズム、そして
何よりハーモニーのパートを多く担うことになります。曲がパターン化されたものや、聴き馴染んだものであれば
たとえメロディの提示が最小に抑えられていたとしても、端はしに曲のエッセンスを感じ取り、その上でのハーモニー
やリズムの変化を楽しむことができるのですが、まったくの新曲の場合、すべての音の要素を渾然一体ととらえる
ことになり、なにか抽象画を見つめているような感覚に陥るのです。
ただ、このことは私だけの感想でもちろん一般論ではありません。
現にRYOさんだって、アンさんだって最初から曲の世界に充分浸りきっていて羨ましく感じました。
これは、私のコンプレックスでもあるんですが、どうも曲の良さを最初からすぐ嗅ぎとる能力が低いみたいなんです。
例を挙げるなら、ビートルズの『ラバーソウル』を最初に聴いたとき、キャッチーで甘々の「ガール」は一発で
気に入ったんですが、「ミッシェル」の良さはちっとも分かりませんでした。何かハッキリしない曲だなという
印象でした。それが聴きこむにつれ、いつのまにかすっかり好みが逆転していました。
まあ、そんなことなんで、今回のライブの感想はかなり失礼な内容にもなっているんですがお許しください。
それにしても、MDさえ残っていたらもっと聴きこんで勉強できたのにな〜。

第2部
1)ギターソロ
  So Natural〜Over the Rainbow
 ベースソロ
 ドラムソロ
2)M1
3)Someday My Prince Will Come
4)Spring Dream
5)Momo's Blues
6)アンコール
 Siziliano aus der Flotensonate Nr.2 (J. S. Bach)
 フルートソナタ第2番より「シチリアーノ」

第2部はまず、トリオの各メンバーが一人ひとりでソロを披露するというコーナーから始まりました。
ここで、エンペラの耳の悪さがまた露呈されます。
トップバッターは管理人さんのギターソロで、相当に複雑な装飾コードをちりばめた演奏を聴きながら、
「おっ、この曲は? やっぱりスタンダードだと、複雑な演奏でもホッとしていいもんだな」
などと思っていたのですが、なんだ管理人さんオリジナルの「So Natural」じゃないか・・・。
心の中でひとりで恥ずかしがっていました。
つづいて、加瀬さんのベースソロ。いろんな曲の断片を感じさせる演奏ですが、絶対に特定の曲にしない。
5拍子になったとき、これは「テイク・ファイブ」にしなきゃおさまらないでしょ、と聴き続けると
無理矢理そうはしないんだもん、加瀬さんの意地っ張り。
ドラムの市原さんの番になり、「スティック、ブラシ・・・どれ使いましょう?」と客席に呼びかけると、
いつの間にか客席にいた管理人さんから、「全部!」と野次がとびます。
「言うんじゃなかった」とこぼしながら、まず手のひら、ブラシと本当に全部使って凄まじいドラムソロを
披露してくれ、やんやの喝采を浴びます。

(2)は再び新曲のM1。第1部の「Feel it」に似た曲調のこの曲では、管理人さんはテーマを全編オクターブ
奏法で、アドリブ部分で猛烈な弾きまくりを聴かせてくれます。しかし、この曲もそうですが、今回の新曲
をスーパーバンドのバージョンで聴いてみたいと思うのはルール違反なんでしょうか?
(3)は管理人さんお馴染みの曲なので、お気に入りなのかな? コーラスサウンドで聴くとまた違った雰囲気。
(4)『これをライブで聞くのは、多分、初めて。
  これ、もっとこれからもやって欲しいなあ。
  改めて、いい曲だなあ、って思った。
  なんとなく、So Natruralのラストの曲名だけに、これを聴くと「オシマイ」
  と思うのです。』というコメントで決まりでしょう!
(5)は同じトリオの横浜ファーストでのオープニングナンバー。私にとっての萩谷サウンドの原点です。
(6)考えてみれば、管理人さんのクラシックギター演奏は初めて聴きますね。同じガットギターを使っても
  ジャズ曲しか聴いていませんでしたから。