Mr,エンペラのライヴレポート

萩谷清Trio Live at りぶる
市川りぶる / 10月11日(土)
Gt:萩谷 清 Bass:吉木 稔 Drs:大槻 KALTA 英宣


このりぶるで最後に管理人さんが演奏したのが、確か昨年の9月でした
から、この店でのライブはまるまる一年ぶりということになります。
月日の流れはほんとに早いもの(ため息)。
と、べつに秋だからといって感傷的になることもないのですが。

しかし、今年の“芸術の秋”の管理人さんはライブのスケジュールが
ものすごいことになっていますね! 先日のお座敷JAZZから始まって、
このりぶる、翌日は横浜ヤマハと、10月だけでも6カ所もラインアップ。
それにプラスして月末にはスーパーバンドの公開レコーディングまで!
いやはや、すごい充実ぶりです。
そしてそのライブスケジュールのなかで、私がひときわ興味をそそられ
ていたのがこの日のトリオでした。

今回ドラムを担当するのが、話題の若手ギタリスト小沼ようすけとの
ユニットや、島谷ひとみの「亜麻色の髪の乙女」のアレンジャーとして
知られる大槻 KALTA 英宣さん。
そう聞くと、管理人さんの「Feel It」あたりのオリジナルに新風を
吹き込んでくれそうな期待も湧くじゃありませんか。
しかしまあそうは言っても、そのへんの楽曲もすでに練りに練って出来
上がっているわけで、昨日今日初めて会って、パッパッと合わせてそう
簡単に変わるような甘いものじゃないということも判ってはいるんです
が・・・。
しかし、今度のようなメンバー決めって、どういう経緯でどういうふう
に決まってくるんでしょうね?
さっそく大槻さんのホームページ等からリサーチをかけたところ、
(管理人さんのライブのメンバーが決まると、
  いつもこんなことやっています。私ってやっぱりヒマ人?)
大槻さんはH.U.T.の鳥越啓介さんと何回かライブをやっていました。
かたや吉木さんは、H.A.T.のドラム安藤正則さん(私、ご贔屓です!)
とジョイントすることが多いようでした。
ともかくそういうセンでのご縁のようでしたが、ご両人ともわが萩谷
師匠とは初顔合わせ。いったいどのような化学反応を見せてくれるの
でしょうか?
だけど大槻さん、実際に会ってみると彼のホームページでの写真と顔
が違いすぎ!まるで別人のよう。
http://www.kaltek-musik-engine.com/
HPでの写真は愁いを含んだインテリ青年風、カフェバー(古っ)あた
りが似合いそうなイメージ。ご本人はフォトギャラリーでご覧の通り。
大槻さん、髪を短くして金髪にしたの失敗じゃない?(失礼!)
■第1セット
1. 枯葉
  とんがった気配が漂う今回のユニットで、管理人さんがどういう
  配曲をするのか興味津々だったのですが、まずはオーソドックス
  に定番で小手調べといったところだったのでしょうか?
  あれ管理人さん、のっけからピックを使っている。ははあ、名刺
  がわりに得意の超絶ピッキングで生意気ざかりの若い連中をきっ
  ちりとシメてやるつもりですね?
  (管理人さんから「ちが〜う!」という声も聞こえそうだが・・)
  ギターのイントロが終わり、いよいよドラムとベースが演奏に加
  わってきたところで、気になる二人のお手並み。コンテンポラリ
  ージャンルが多そうな大槻さんだが、ジャズはちゃんと叩けるの
  か(失礼!)? しかし一聴してそんな心配(?)にはおよばな
  いことがはっきりします。前面に出過ぎることもなく、かといっ
  て抑えすぎることもなく、手数もそこそこ繰り出してリッチな音
  場を創りあげていきます。
  ですが、私はここでは思わぬ伏兵、吉木さんに耳を奪われました。
  けして饒舌なベースではなく、一般にいうメロディアスなタイプ
  のそれとは違うにもかかわらず、ものすごく歌心を感じるベース
  なのです。これはタイミング?それともダイナミクス(抑揚)の
  つけかたの為せる技?
  これだったら何をやっても大丈夫と確信したからか、萩谷師匠の
  演奏にもどんどんギヤが入ってきます。後半のベースソロ、ドラ
  ムとの4バースのころにはかなりヒートした展開になってきた。
  ソロをとる大槻さんがここで本領を発揮、凄まじいスティックワ
  ークを披露します。ジャズが叩けるのかなどと不用意な発言をし
  た舌の根も乾かぬうちにまたまた軽率なことを言っちゃいます。
  大槻さんのドラムは、私が聴いた限りにおいては師匠と組むドラ
  マーの中でいちばんジャジーではないか? 何より連打のスムー
  ズさには舌を巻きました。いや、お世辞じゃなく。

2. 星影のステラ
  おっ、間髪を入れずに「ステラ」のイントロが。うん、この曲は
  師匠の得意曲です。若いメンバーに聴かせてやって。
  (こらこら、お客にじゃないのか?)
  どう得意なのかというと、コード進行の流れだけでも美しいこの
  曲ですが、師匠はそれにそのまま乗っかるということをせずに、
  アウト気味のフレージングでギリギリっと廻りから攻めたてる。
  そうするとあーら不思議、曲本来のテイストをわずかにかいま見
  させることで、ストレートに聴かせるより数段その美しさが際立
  ってくる。私はこの曲では毎回そこのところを聴きどころとして
  楽しませてもらっています。ただし、このアウトのさじ加減はた
  いへん難しく、師匠といえど狙い通りにいつも大成功という訳に
  はいきません。時には難解に、未消化に終わるケースもある。
  そしてそれは一緒にやるメンバーの資質にも関係するようです。
  今回はどうか? ここでドラムの大槻さんがすばらしい反射神経
  を見せ、師匠のギターに最初に喰いつきます。師匠がアブナい展
  開を仕掛けると、ドラムが「もっとやれ、どんどんやれ!」とそ
  れを煽り、自らもまるでドラムソロのようなアグレッシブなバッ
  キングで加わっていきます。おっ、師匠もアウトしたけど、大槻
  さんのこのドラムもそうとうアウトしてるっていうやつじゃない?
  このギターとドラムの応酬は、久しぶりに感じたジャズの醍醐味
  です。一瞬フリージャズのようにも聴こえる。しかし、どんなに
  激しく叩いても、けしてギターにぶつかって邪魔をするというこ
  とがない。さすがです。吉木さんのベースもオーソドックスなが
  らどんどん熱くなっていき、どこかに飛んでいってしまいそうに
  なる二人を捕まえるような、押し上げるようなリキの入ったプレ
  イです。そう、この曲の出来は最高だったんじゃない?
 *エンペラ注:
  文中の「アウト」というのは、コードスケールから外れた音をわ
  ざと使うことで、演奏を非常にスリリングなものにします。
  シロウトの立場でいいますと、アウトするのはとてもこわい。
  スムーズに戻れる力量が伴わないとただのデタラメ弾きと変わら
  なくなります。
  「アブナい」というのは、誉め言葉で、「スリリングでかっこい
  い」と同義語です。しかし、演奏後管理人さんに「この曲ではい
  つもアブナいことやってますけど、今日は輪を掛けてすごかった
  ですね」と言ったら、「・・・アブナいって、キミねぇ」とイヤ
  そうな顔をされていた。
3. カミン・ホーム・ベイビー
  さて、一緒にアブナいことをやった三人はもうすっかり仲間。息
  もぴったりで、次は何を聴かせてくれるのかな?と思ったら、何
  やら聴きなじみのイントロが。
  「これは、えっとFeel It!だっけ?そうだそうだ」と思ったん
  ですが大間違い。テーマになったら「カミン・ホーム〜」でした。
  二人が渡された楽譜を見ながら演奏を始めたので、てっきり萩谷
  オリジナルかと勘違いしました。管理人さんのオクターブ奏法に
  よる重厚なテーマ弾きと、ブッ飛び加減が半端でないオブリ弾き
  の対比がすばらしい。ちょうど「Montgomery Land」のような
  構成になるわけです。いつもはセッションで比較的自由に演奏さ
  れていた曲ですが、こうしてエンディングまできっちりアレンジ
  が施されるとやはり立派な作品という感じになってきますね。
  ここでも吉木さんと大槻さんのサポートが頑張ります。とくに終
  盤のドラムソロには完全にノックアウトされました。エイトビー
  ト(16ビート)の曲ですが、ジャズとしか言いようのない強烈な
  ものです。ドラムにはこんなに表現力があるんだということを久
  しく忘れていました。私もともとはギターよりドラマーになりた
  かったんですが、最近はドラムを少しナメていたかもしれない。
  すまんです。また、久しぶりにバディ・リッチを聴きたくなった。

4. ウェイブ
  ここでは、この日これまででいちばんソフトな選曲だろうこの曲
  が演奏されます。変な言い回しだ?確かにそうですね。
  常日頃管理人さんの追っかけをやっていて、萩谷清のギターでだ
  ったらどんな曲でも聴いてみたい(お座敷小唄だって・・)とい
  うのが偽らざる心境ではあるのですが、反面、ライブでの選曲は
  ミュージシャンにとって重要な自己表現になるとも思うのです。
  だから、管理人さんにはやたらぬるいスタンダードナンバーは気
  軽にサービスしてほしくないという矛盾した気持ちも持っていま
  す。とくに今回のように初めてのメンバーで、そこそこ活躍して
  いる人達とやるようなケースでは、「あの萩谷清がこんな曲やっ
  てるのか?」などとは思わせたくない。
  (いかんですな、ここまできてもまだ気を許していない・・)
  ・・・・と考えていたのですが、これは私の了見の狭さ。
  考えてみたら、萩谷清が弾けばどんな曲でも一級品になります。
  そんなことは一曲目の「枯葉」をやった時点で、若いメンバーも
  身にしみて実感しています。前曲「カミン・ホーム・ベイビー」
  をここまでちゃんと聴きごたえのあるものにできるギタリストが
  他にいますか? もちろん、この「ウェイブ」も絶品で思い知っ
  たかの出来。いや、思い知りました。二人のバッキングも最高や
  ねぇ。
  P.S. 管理人さん、これからもどんどんいろんな曲をやって下さい。

5. オール・ザ・シングス・ユー・アー
  「じゃ、最後はちょっとリラックスした曲をやろうか?」と言い
  ながら、このナンバーに。 えっ、この曲はいつもけっこうゴリ
  ゴリやっちゃうじゃないですか? ほんとにリラックス?
  と思ったら案の定、なかなかヒリヒリするシャープな出来栄え。
  しかし、息もつかせぬ演奏というのはこういったことをいうんで
  しょうね? ヘビースモーカーの私がこの前半の1セット目に吸
  ったタバコはなんと一本だけ! べつに禁煙の店じゃなかったし
  我慢してたわけじゃないのにこんなことは初めてです。
■第2セット
いけない、いつにもましてダラダラ長いレポートになってしまった。
書き方に気をつけないとね。それでは今後のこともあるので後半はひ
と口メモ風に・・・。
あっ、そうだ。お断りしておきますと、この日私は珍しく一曲もリク
エストをしていません。演奏の緊迫感に圧倒され、とても口を挟めま
せんでした。

1. いつか王子様が
  管理人さんのソロで聴き馴染みの曲、このトリオで聴くと改めて
  ビル・エヴァンスの「ポートレイト・イン・ジャズ」を想い出し
  ます。

2. Feel It!
  スーパー・バンドの重戦車の迫力とは趣を異にしますが、このト
  リオでのカラフルさはアリ。過去のH.I.K.、H.A.T.(H.U.T.ではま
  だやっていない)と比べると、正直こちらのほうが面白い。CTI
  の頃のフュージョンの黎明期を想わせるサウンドで琴線を揺さぶ
  られます。

3. オールド・フォークス
  「いつか王子様が」と並び、この日のリリカル路線のナンバー。
  こうした曲でもこの日のトリオのはまり方は抜群でした。

4. M-1
  この曲は昨年曼陀羅でのH.I.K.弾き下ろしからじつに2回目の演奏。
  ずっと管理人さんが出し惜しみしていた曲です。
  しかしこの演奏を聴くととてもトリオの演奏とは思えないカラフ
  ルさ。まあ管理人さんは一人でも、いつもメロ、コードカッティ
  ング、オブリと同時に三人前をこなしてるわけなんですが、それ
  にしても、です。

5. ヒア・ゼア・アンド・エブリウェア
  熱くなりすぎた熱を醒ますように、ソロ・ギターで。

6. ブルー・ボサ
  最後は最近の管理人さんの定番のこの曲。あまりにスムーズすぎ
  てふだんはあまり気にとめていなかったのですが、この曲ではい
  つも後半かなりの速弾きを披露してくれています。
  この日はいつにもまして熱くなっていたのか、管理人さんは輪を
  かけて超・超速弾きを繰り出します。それを見てクールにきめて
  いたはずの大槻さんが思わず、「おお〜っ!」と声を出してのけ
  ぞりました。速いも何も、まるで機関銃のようなピッキングでし
  たから。昔、Mr.BIGのポール・ギルバートがドリルの先にピック
  をプロペラのように装着してのドリル奏法というのを売り物にし
  ていましたが、思わずそれを思い出してしまいました。しかも、
  こちらのほうがすごいのはトレモロではなくちゃんと一音一音フ
  レーズになってるんですから!その師匠の指先を見つめていた吉
  木さんの目はこころなしか潤んでいるように見えました。大槻さ
  んも触発されるかのように、ドラムの乱れ打ちで応戦。吉木さん
  はと見るとドラムより大きな音でベースのボディをバンバン叩い
  ています。さすがの師匠とはいえ、そこまで無茶をやると、パッ
  セージの切れ目切れ目ではちゃんとした音にはならず、ブツブツ
  とした空ピックのようなことになってはいますが、そんな細かい
  ことは言ってられないくらい熱い演奏で、こんな凄いものはそう
  そう見られるものでないことは確かでした。演奏を終え、ステー
  ジから降りてきた管理人さんは、「へへへ、やりすぎちゃった」
  と悪戯小僧のように照れていました。